東京家庭裁判所 昭和48年(家)1479号 審判 1973年4月21日
国籍 韓国 住所 東京都豊島区
申立人 権基祥(仮名)
主文
申立人の名「基祥」を「明敏」と変更することを許可する。
理由
申立人は、主文同旨の審判を求め、申立理由として、つぎのとおり述べた。
申立人の国籍は朝鮮で、戦前から来日し、朝鮮料理店を営むが、昭和二〇年秋頃以後今日まで、取引関係においては勿論、文通その他個人的生活関係においても、通称名として「明敏」を使用しているので、戸籍名「基祥」を「明敏」に変更することの許可を求める。
申立人の提出した取引関係書類、当座勘定取引開始資料書、手紙類、申立人審問の結果によると、申立人主張の事実が認められる。
準拠法についてみるのに、改名につき裁判所の許可を要するかどうかは、法律行為の方式に関するものと考えられるから、法例第八条第一項により、その行為の効力の準拠法に従うところ、改名に関しては、法例上直接の規定がない。しかし、名はその者の人格権に属し、本国法に従い、その権利関係が定まるものであり、したがつて、改名については、本国法によると解するのが相当である。本件において、申立人については、大韓民国の戸籍法がその準拠法となる。韓国戸籍法第一一三条第一項によると、「改名をしようとする者は、法院の許可を受けた日から一〇日以内に申告しなければならない。」とあり、法院の許可を要するが、いかなる要件を具備した場合に、法院で許可されるかについては全く規定がない。したがつて、同条の規定は、概括規定で、法院に広範な裁量権を認めたものであり、それが裁量権の濫用にあたらないかぎり許可できるものと解される。本件において、前記認定の事実によると、申立人の名「基祥」を通称名の「明敏」に変更することは相当であり、それを許可することは、右の正当な裁量範囲に属するものというほかない。
よつて、申立人の本件申立を認容し、主文のとおり審判する。
(家事審判官 高木積夫)